生駒 忍

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アブラハムの社名になったマズローの自己実現

きょう、msn産経ニュースに、誰のための“ソムリエ”か 「アブラハムモデル」の虚と実という記事が出ました。金融庁による「投資助言会社」への6か月業務停止処分について掘りさげたものです。やまもといちろうや「富士経済調べ」騒動を通して、いろいろと不信感をもった人も多いと思いますが、今回のポイントがわかりやすく整理されています。

最後のページに、「アブラハムの社名は、米国の心理学者・アブラハム・マズローにちなんでいるという。マズローは、衣食住や安全を満たした人は自己実現を求めるという「欲求階層説」を唱えたことで知られる。」とあります。あの説は、一般向けの心理学の本にもよく取りあげられますし、経営学など心理学の外の分野でも親しまれます。ですが、心理学ではずっと昔に疑問符がついたものなのです。コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則(P. コトラー・H. カルタジャヤ・I. セティアワン著、朝日新聞出版)では、実はマズロー自身もあのかたちに後悔したといわれ、自己実現が最下層にくるパターンに言及されています。それでも、教員採用試験に出るので教えなければいけなかったり、あるいは基礎系の心理学者では、ERGも知らずに止まっている方もいたりしますので、いまでもだいじな理論のようにあつかわれがちです。最近では、スタンダード教育心理学(服部環・外山美樹編、サイエンス社)で、別々の章が同じピラミッドを登場させました。