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問65 欲求階層説と自己実現欲求

1、自己実現という用語をつくったのは、神経学者のGoldstein, K.です。ベルリン大学でゲシュタルト心理学に触れましたがナチス政権成立により亡命し、アメリカで後のゲシュタルト療法や、Maslow, A.H.やRogers, C.R.の人間性心理学アプローチに影響をあたえました。

2、Erikson, E.H.の心理社会的発達理論は、生涯発達を8段階に区分し、そのうち青年期の発達課題を、自我同一性の確立-拡散としました。これをMarcia, J.が発展させた中で、モラトリアムの概念もつくられました。そして、その考え方を日本社会論に導入したのが小此木啓吾で、モラトリアム人間の時代(中央公論新社)はベストセラーとなりました。

3が正解です。Maslow, A.H.の欲求階層説では、5段階のうち自己実現欲求は存在欲求とされ、それ以外は欠乏欲求とされました。

4、Maslow, A.H.の欲求階層説は、経営学などではなお人気があり、信じている人も多いと聞きますが、実証的には支持されていません。これに代わる考え方に、Alderfer, C.P.のERG理論があります。Eはexistenceですが、哲学的な実存ではなく生物学的な生存の、Rはrelatednessで社会的関係の欲求であり、Gはgrowthで、これが自己実現によく対応する欲求です。