自殺に関しては、ここで取りあげた予防が重要であることは明らかですが、既遂後の遺族ケアも重要なテーマとなっていますので、合わせておさえておきましょう。なお、既遂後の視点からは、「自殺」という表現を改めるべきという考え方もあります。日精協の要望書を挙げておきます。
「自殺」呼称の見直しについて(要望) - 日本精神科病院協会
1、厳密に効果を検証することはむずかしいのですが、日中の相談内容からみて、無効ということは考えにくいでしょう。また、自殺対策に主眼をおいた電話相談活動に、24時間対応でないものは多くあります。日本いのちの電話連盟の、全国のいのちの電話のご案内を参照してください。
2、自殺未遂はむしろ、同じ人物がくり返す傾向があります。既遂となったことでくり返しが止むのでは遅いですので、ハイリスク群とみての積極的な支援が求められます。自殺対策加速化プランでは、6番目に「自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ」がかかげられました。
3が正解です。大きな自殺報道の後に、後追い自殺とは考えにくい無関係な自殺が増えることが知られていて、Phillips, D.P.はウェルテル効果と呼びました。報道の自由とのバランスはむずかしいところですが、WHOは、メディアが不必要に目立たせたり手段をくわしく知らせたりしないように求めています。横浜市立大学のグループが訳した、自殺予防 メディア関係者のための手引き (日本語版第2版)を参照してください。
4、自殺対策基本法が国民に課したのは、6条にある「自殺対策の重要性に対する関心と理解を深めるよう努める」という努力義務のみです。また、ここはそもそも、「すべて国民は」という訳文のような表現が、今日新しく法令をつくるときに使われるとは考えにくい時点で、おかしいと気づくところでしょう。